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大正十二年。関東大震災。
小笠原美春 享年二十三歳。
昭和四年。
小笠原 了 肺結核の為、逝去。
享年 三十二歳。
その妻、淑子 夫の介護にあたり感染。
翌年昭和五年。 同、肺結核にて逝去。
享年 三十歳。
昭和九年。
小笠原 京 小笠原造船、火災事故にて。
享年 三十七歳。
「これ……全部、榮子さまの大事なお友達なんでしょうね……」
「ずいぶんみんな若くして亡くなったんだな。まあ、そういう時代ではあったんだろうけど」
それでも美春さんは、短くとも幸せだったと教えてくれた。
わたくしも約束通り、幸せになる事を諦めたりはしなかった。
みなさんよりもずいぶん長く生きてしまったけれど……
もう、いいでしょう……?
「風が出てきたわ。冷え込む前にお部屋に入りましょうか、榮子さま」
……心地よい風。
わたくしの身体を桜の花びらで取り巻いて、ふんわりと運んで行ってくれるよう。
みなさんと、高之さんのいらっしゃる場所に……。
「…………榮子さま?」
「はは、今度こそ寝ちゃったみたいだな。僕たちの報告はまたにしよう」
「待って……高志さん。……………榮子さま、目を開けて」
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