さくらの座敷童女

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   *・゜゚・*:.。.:*.。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゚・*  元、藩主の流れを汲む、諸侯華族小笠原伯爵家。  その当主たちが生活する屋敷とは別に設けられたここ、迎賓別館は、洒落た扉とレンガ造りが特徴的な西洋風の建物だ。 (あ……、さっき窓から見えたのはやっぱり桜だったのね)  しずしずと渡り廊下の先を行く淑子さまの後に着いていくと、窓の外に大きな桜の木が見えた。  薄紅の可憐な花が今を盛りと咲き誇り、昼下がりの陽光を柔らかく受け止めている。 「いいこと? 美春さん。サロンに入ったら、まずは御当主へご挨拶。その後、中央のフロアで演奏しますから。みなさん、そういう決まりで進んでいますからね」  広々とした玄関ホールに差し掛かかった時、こわばった微笑みを貼り付けた顔の淑子さまが振り返った。 「はい……承知しました」  これまで何度も聞かされた段取りだけれど、ここは素直に頷いておくのが賢明というものだろう。 (それにしても、ずいぶん沢山の人が招待されてるのね。しかも私たちのようなお若い方がすごく多い……)  中央の螺旋階段を談笑しながら下りてくるのも、反対側の棟からこちらに向かってくるのも、ほとんどがみな美しく装った若い女性。
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