17 出発の日

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深夜。 壁掛け時計のの、チクタクという音だけが聞こえている。 家族が寝静まり、静寂に包まれたリビングのソファーに腰掛け、クッションを胸に抱きながら、留美はこれまで起きた出来事の整理を試みていた。 まず、鈴木健太がいなくなった。 でも、『もともといない事』になっていた。 私の記憶には残っているのに、他の人は誰も知らないと言う。 その前日に、私は海で何者かの強烈な視線を受けて、倒れてしまった。 何か関係があるのだろうか? オーナーの話では、倒れていたのは一瞬だったらしいし、目が覚めた時も、特に違和感は感じなかった。 でも、明らかに、その日から何かがずれ始めたのだ。 まるで砂山がゆっくりと崩れ始めるように。 アキちゃん、浩太、そして優人。 次々と自分の周りから消えていった。 そして勤めていた会社までも。 記憶障害なんかじゃない。 確かに全て存在していたのだ。 優人は消える前に、全ての記憶は曖昧だ、と言っていたが、今ではあらゆる記憶をリアルに思い出す事ができる。 これは現実に起きたことなんだ。 でも、全て失ったと思ったのに、両親とこの実家だけは残っていた。 なぜだろう?
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