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留美は、はたと気がついた。
それは、留美のルーツだからだ。
ここで生まれ育った。
この場所が残っていることを強く願った。
つまり私がこの世界にいる事の証なんだ。
この世界は、本当は崩れてなんかないのかもしれない。
歳は違うが優人は見つけたし、カナロアやオーナーも存在している。
留美は頭の傷の事を思い出した。
全く記憶にない傷。
ふいに、幽かであやふやなイメージがフラッシュバックする。
暗い海の中、たくさんの泡、激しい逆流?
それ以上は、どうしても思い出せなかった。
考えれば考えるほど、混乱する。
だが、それは嵐の海の光景であると考えて良さそうだった。
見た事も無いはずなのに、イメージだけは頭の中にある。
それが何を意味するか確かめるには、実際に嵐の海に飛び込んでみるしかないのでは。
そう思った。
例の、嵐の日に行方不明になった女の子が、自分を引き寄せている気がする。
女の子が叶えられなかったバードケージを抜けた先に、本当の真実がある。
なぜか、そんな気がしてならなかった。
留美は、沸き上がる興奮とかつてない恐れに包まれ、全身が震えるのを感じた。
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