第1章

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「やあ、アリス。待ちわびたよ」 扉をあけた僕に音色が話しかけてきた。 いや違う。 音色は今も僕の耳に聞こえている。 話しかけてきたのは音色じゃない。 畳が敷き詰められた部屋。 窓もなく、家具もない。 始めに入った部屋とは真逆の空っぽの部屋。 そんな部屋の中心に座り込むようにして居座る少女。 その少女から言葉は発せられていた。 「ようこそ。不思議の国へ」 腰まで伸びそれでもなお止まることを知らず、畳の上を流れる艶やかな黒髪。 まるで夜の闇をそのまますくい取って雫にしたような瞳。 闇夜に浮かぶ月のように白い肌。 それはもうまるで、この世のものとは思えない美しさだった。 少なくとも僕はこれ以上に美しいものを今まで見たことはない。 そう思ってしまうほどには美しかったのだ。
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