第1章

2/23
前へ
/23ページ
次へ
去年の冬、両親が死んだ。 交通事故だった。 妹と一緒にクリスマスの買い出しに行った帰りのことだったらしい。 らしいというのは僕自身その日のことをあまり良く覚えていないからだ。 事故の当日親戚のおばさんが来て何か大声で言っていた気がするが、その内容さえもうまく思い出すことができない。 あれから四ヶ月が経ち僕は高校生になっていた。 うちに来いと言ってくれた親戚の人は何人かいたのだが 僕はそのありがたい話しを断り今も両親と妹と過ごした家で一人生活を送っている。 あの日から妹は目を覚ましていない。 妹の帰ってくる場所を守るためだと自分や周囲には言い聞かせているものの この空っぽになってしまった家に帰ってくるくらいなら このまま眠ったままでいる方が幸せなのではないかと思ったりもする。 あの日から僕の世界は変わってしまった。 高校には中学からの友達もいるし、高校に入ってから親しくなった友人もそれなりに存在する。 でも何かが足りないのだ。 あの日から心の中心にぽっかりと穴があいてしまったように、いつも心を風が吹き抜けていく。 友達や親戚の人と話しているときには、心配をかけまいと愛想笑いを浮かべている。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加