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美織音は、雅宏のクラスまでかたい表情で向かった。
今は休み時間らしい。
生徒たちがわいわいと話しながら廊下を歩いている。
美織音を見かけると、みんなおしゃべりをやめた。
しかし、そんなことを気にしている場合ではない。
そこへ、階段を下ってくる雅宏がいた。
美織音を見かけると雅宏は足を止めた。
「あ、美織音、」
美織音は雅宏の横に並ぶと、小走りに階段を降りていく雅宏に声をかけた。
「ねえ、お金、出したって聞いたけれど。正気?」
美織音は周りの生徒に聞こえないように小声で尋ねた。
「え?停学、理事会で否決になった。よかったな。今から俺、父さんと話が、」
「ちょっと!はぐらかさないで。」
そう美織音が言った瞬間、雅宏の身体が前に崩れ落ちた。
「あっ、」
落ちる…!
美織音は手を伸ばして雅宏の腕を掴もうとしたが遅かった。
雅宏はかなりの勢いで階段から転げ落ち、踊り場に倒れこんだ。
周りの生徒はギョッとしてざわめく。
美織音は慌てて階段を降りると倒れこむ雅宏に駆け寄って体を揺すった。
「雅宏?!雅宏!ねえ、大丈夫?!雅宏!」
雅宏は小さく呻き声を上げてそのままぐったりとしてしまった。
「ちょっと、誰か!誰か助けて!」
美織音が叫ぶと、立原が後ろから走ってきた。
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