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「私と話しながら1階まで階段を降りていたら、前に倒れこんで、そのまま踊り場まで…。」
美織音が説明すると雅道は小さく頷いた。
「エントランスまでの大階段か。…立原、もう少ししたら幸子が来るから、あとは頼む。」
立原は呆気にとられた。
「雅道さま、お待ちになって。」
美織音は慌てて引き止めた。
いくらなんでも雅宏の意識が戻るまでいるのが普通じゃないのだろうか。
「理事会が入った分、あとのスケジュールが詰まってるんだ。雅宏に、よろしく伝えてくれるかな。」
理事会、と聞いて美織音は頭に余計血が上った。
「どうして、こんな時に雅宏の側にいられなくて、どうして雅宏の我儘には付き合ったんですか。」
雅道は無表情で、美織音から視線をそらした。
「陰宮くんのしたことが、僕もどうしても許せなかったからだよ。…さゆりに、言えるかい?」
美織音は母の名前を出されて何も言い返すことができなくなった。
雅道はそのまま病院を後にした。
その後、医者から詳しい説明を受け、2人は雅宏の病室に通された。
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