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「そんなに、虎南と別れてほしかった?」
「別れたんですか。」
紫苑は素知らぬふりをして尋ねた。
「昨日、屋敷に来たよ。あなたみたいなろくでもない人とはもういれませんって。…あの子らしいけどね。そんなにろくでもないことないと思うんだけど。」
本気で自分のものにしたかったらしい。
紫苑は、疎ましく思いながらもそれを出さないように努めてきた。
虎南は、紫苑から見ても、美人で快活で、自分とは正反対だけれど、敵に回したらとても怖そうだった。
そして、頭の回転の良さが満に似ていた。
さすがにもう諦めどきかとは思ったけれど、美織音のしたことがどうしても許せなかった。
「お兄様はろくでなしなんかじゃありません。私のこと、大切にしてくれるもの。」
そう言うと満は複雑な視線を紫苑に向けて、頭を撫でた。
「俺の責任の取れないことはしないように。庇えることと庇えないことがある。」
「…。」
満の後ろ姿を見送ると、紫苑はそのまま教室に向かった。
Aクラスの紫苑の席には先客がいた。
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