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「椎名。」
呼び止めると、勉強していた問題集から、吉良は顔をあげた。
「おはよう。」
紫苑は不満そうに吉良の前の机の椅子に座った。
「この前、あなたが鍵を閉め忘れたから立原先生に見つかったじゃない。」
「ごめん、怒られた?」
悪いと思ってないな、と紫苑は呆れた。
そういうところが吉良の良いところだけれど。
「襲われたわ。」
「は?」
「…やだ、未遂よ。雅宏くんが止めに入ってきたから。」
紫苑は髪の毛をひと束指先にくるくると巻きつける。
「立原先生、ドキドキしちゃった。ああいうこと、できるんだ。」
「…。俺は殴られると思ったから逃げることしかなかった。」
「殴らないわよ。先生だもの。」
「東條のこと、裸にしてプールに沈めたの、絶対先生だと俺思うんだけど。他に誰がやる?」
紫苑は笑って首を傾げた。
東條佳乃は邪魔だったからちょうど良かった。
吉良のことは、自分の手中に収めておきたい。
なんとなく。
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