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「そんなこと、無理よ。」
甘くて高い声。美佐だ。
紫苑はゆっくりと振り返る。
美佐は教室に入ってくると、紫苑と吉良の前に立ちふさがった。
「消して。私と雅宏様の動画。」
怒ってもかわいい子だ。
紫苑は鼻で笑うと制服の裏ポケットを探った。
「これ?」
美佐は手を差し出したが、紫苑はそれを払った。
「いいじゃない、これ。雅宏くん、これがあったらあなたの言うこと、なんでも聞くわよ?」
「私、あなたがどんなことをして潰されても構わないですけれど、椎名にそんなことさせたくないですわ。」
「可愛がってあげたのに、ひどいこと言うのね。私だって躊躇わない訳じゃないのよ?でも、雅宏くんはそれなりの罰は受けなきゃいけないでしょう。」
美佐のことをどうしようだなんて紫苑は全く考えていなかった。
ただ、可哀想な子だ。
「一人でやってくださる?椎名、いつまでこんなことしてるの?!私、美乃様と真剣に付き合ってると思ったのに!」
「美織音のこと、手に入れるためならなんでもするよ。」
「…っ、最低!そのままだと、この人に飼い殺されますわよ!」
そう言って美佐は走って教室から出て行った。
「美佐は、かわいいわね。」
紫苑なクスクス笑いながら、吉良の首筋を指先でなぞった。
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