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美織音は、久しぶりに実家で目覚めた。
殺風景な部屋になってしまったけれど、この大きなベッドだけは売らないで正解だ。
寝心地が全く違う。
身支度をしてリビングに向かうと、柏木がトーストをかじりながらコーヒーを飲んでいた。
「柏木、おはよう。お姉様は?」
「おはようございます、お嬢様。虎南なら、仕事に。資金繰りをしに行くみたいです。」
「そう…、大変ね。親戚中あたっても、今となっては厳しいし…。」
美織音は、自分で紅茶を入れると、トーストにジャムを塗った。
「俺も、銀行に話しに行くんですけど…、学校まで送りましょうか。」
「自分で行くわ。」
「いや、ここからだと少し遠いですし、通り道なので。目立たないところで降ろしますから。」
そこまで言われたら、断るのもなんだか気がひけた。
美織音は鏡で身だしなみをチェックするとローファーに足を通した。
後部座席に乗り、車が走り出したところで、柏木は美織音に話かけた。
「陰宮さんと別れたらしいです。」
誰がと言わなくてもわかった。
「でも、俺とは、もう少し、時間をかけたいって。」
「…そうね。ね、柏木って立原先生と同じくらいモテたんでしょう?本当?」
「えっ、なんですか、その疑いの目は…!!」
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