一粒の涙

「転機」

－　転機　－

桜花満開の季節。紅顔した面皰が初々しく

一寸大きめの学生服。

大人の階段を上り始めた貴志も　中学生になった。

部活動の選択も迷う事なくバレーボールを選んだ。

部活動仲間等も増え、様々な出逢いもある。

毎日が新鮮だった。

或る日。

友人の家を訪ねた事が貴志にとって転機となった。

普段温和しい友人の部屋とは

想像にも出来ない光景であった。

壁一面に張り巡らされた　

馬、馬･･････

馬のポスター。

緑一杯の牧場で跳ねる仔馬。

モノクロームで陰影姿の馬列。

雪化粧した風景と白い吐息の白馬。

そして一番印象的だったのが広いターフを

何十頭もの馬が　走っている写真だった。

最後の直線をゴールに向けて走る姿だった。

超望遠レンズを使った写真は

オーラを纏った馬達の熱気で

ゆらゆらと幻想的な背景になり

緑豊かなターフとのコントラストが

見事に融合した写真だった。