0人が本棚に入れています
本棚に追加
溜息が出た。
貴志の心の中で馬を見たい
触りたいと衝動に駆られた。
その衝動は決して偶然ではなく、必然でもあった。
5歳上の兄:久志も
競馬月刊誌を定期的に購入する程
馬に引かれていたのであった。
ギャンブルのイメージが強く
何時も遠目で兄の趣味を見ていた。
これがきっかけとなり、貴志自身も馬に対する思いが
日増しに大きな存在となっていった。
そして半年の時間が流れた。
兄の影響は許容のピークを迎えていた。
平成7年10月中秋 菊花賞。
久志と共に 貴志は競馬の実況テレビに
釘付けになっていた。
「クラシック菊花賞 優勝マヤノトップガン!」
震えが止まらなかった。
全身にビリリと電気が駆け抜けた。
煌びやかな勝負服を纏い
そして勝ちまくる武豊騎手の姿に憧れ
何かに突き動かされたかの如く
情熱が騎手になる夢へ変化していった。
「騎手になりたい・・・・・・」
「どうしたら騎手になれるの?」
「どこに行けば馬に乗れるの?」
月刊誌がすり切れてボロボロになるまで
競馬の「イロハ」を必死に学んだ。
居ても立ってもいられなかった貴志は
北海道への家族旅行を嘆願した。
最初のコメントを投稿しよう!