「転機」

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溜息が出た。 貴志の心の中で馬を見たい 触りたいと衝動に駆られた。 その衝動は決して偶然ではなく、必然でもあった。 5歳上の兄:久志も  競馬月刊誌を定期的に購入する程 馬に引かれていたのであった。 ギャンブルのイメージが強く 何時も遠目で兄の趣味を見ていた。 これがきっかけとなり、貴志自身も馬に対する思いが 日増しに大きな存在となっていった。 そして半年の時間が流れた。 兄の影響は許容のピークを迎えていた。 平成7年10月中秋 菊花賞。 久志と共に 貴志は競馬の実況テレビに 釘付けになっていた。  「クラシック菊花賞 優勝マヤノトップガン!」 震えが止まらなかった。 全身にビリリと電気が駆け抜けた。 煌びやかな勝負服を纏い そして勝ちまくる武豊騎手の姿に憧れ 何かに突き動かされたかの如く 情熱が騎手になる夢へ変化していった。 「騎手になりたい・・・・・・」 「どうしたら騎手になれるの?」  「どこに行けば馬に乗れるの?」 月刊誌がすり切れてボロボロになるまで 競馬の「イロハ」を必死に学んだ。  居ても立ってもいられなかった貴志は 北海道への家族旅行を嘆願した。
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