「試合」

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- 試合 - 市主催の”年末学童バレーボール大会”が 近づいていた。 貴志の所属するチームは市の大会でも 常に上位入賞する程の強豪チームだった。 5年生になった貴志は多くの6年生がいる中で レギュラーとして注目されていた。 しかし、6年生の父兄からレギュラー登用方法に 不満が出ていたことも事実であった。 監督のお子さんだもんねぇ・・・・・・ でも、クラブチームじゃないんだから・・・・・・ 6年生には最後の年くらい・・・・・・ 配慮して貰わないとねぇ・・・・・・ チームは町内の子供会が運営をしていた。 監督やコーチは町内から有志が集まり 6年生の母親達が役員として、交代制で チームに帯同するスタイルだった。 常勝チーム造りには 能力重視が欠かせないもの。 しかし、我が子が補欠に甘んじている姿に 不満を隠せずにいられない親もいた。 この不穏な空気に監督であり 父である久男も日々苦悩をしていた。 しかし、チームの伝統を守らなくてはいけない。 「伝統」という2文字のプレッシャーは 町内会の理事、役員から上がっていた。 「竹本さん。今年も優勝できそうですね」 「期待していますから」 試合当日。 トーナメント方式で5回戦が行われた。 昨年度優勝チームであったために シード2回戦からのスタートだった。 「今日の試合が6年生最後の試合になる」 「自分の力を信じ、仲間を信じよう」 「皆が辛い練習をしてきたんだ」 「思い起こせ!やれば出来るんだ!」 「勝ったら、みんなでおいしいラーメンでも」 「食べに行こう!」 「先発メンバーを発表する」 「園田!大井!川崎!・・・・・・最後に竹本」 周囲がざわついていた。 何故なら2回戦の相手との力差は 歴然としていたからだった。 補欠の6年生に出場のチャンスだと 考える親が多かった。 「ピ-!」 笛音と主審の手が上がった。試合が始まった。 予想通りの一方的な試合展開だった。 メンバーを途中で入替える事なく そして、呆気なく試合が終わった。 「今年も、このチームの優勝だなぁ」 会場のあちらこちらから溜息が聞こえる程であった。 貴志にも手応えがあった。
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