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「本日からN店より異動になったトップスタイリストの須田さんです。」
店長の林さんが私を自己紹介してくれた。
「須田 深雪です。よろしくお願いします」
私は深々と頭を下げる。
サロンのシステム、メニュー、接客内容全て共通しているので、やりにくさは何も感じないだろう。
アシスタント2人、スタイリスト1人、トップスタイリスト、私と店長の林さん。
「須田さんは、美容メーカーのヘアコンテストを総なめで授賞されてる実力派のスタイリストさんです。
そして、旦那様はうちのサロンのイメージキャラクターを務めていらっしゃる元俳優の本橋ルイさん、改め今はリューマさん。
そんな頼もしいスタイリストさんが急遽N店に来て頂いく事になりました。
須田さんは指名のお客様のみの接客になります。
カットテクニック、セットテクニック、
トータルデザインのセンスを是非、須田さんから吸収出来るようにしてください。
それでは………本日も1日よろしくお願いします!」
「「「「よろしくお願いします」」」」
新しいサロンで気持ちも新に元気のいい挨拶で1日がスタートした。
「須田さん、ウチのサロン来もらって本当に助かります。
そして指名のお客様もありがとうございます!
最近売り上げが低迷してたので、
上層部から、トップ業績のN店の収益でここの店のマイナスをカバーしてるんだなんて、チクリチクリ嫌味言われていましたから。」
林さんは私と同じ年で独身。
髪は短髪のソフモヒで刈り込みが入っていて
風貌は爽やかで笑った時にエクボがある、人当たりが良さそうな人だ。
「私なんかがお役に立つなら良かったです」
私は微笑んで林さんを仰いだ。
「これでリューマさんが来てくれるならウチの店も安泰です。」
「リューマが来るかは分かりませんが………」
私は苦笑して、店内に視線を移した。
「実はリューマさん、モデル時代にココにお客様として来てるんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
意外な事実に驚いた。
「前にいたココのトップスタイリストがリューマさんの事務所の専属ヘアメイクしてたので、そのツテで」
あ、そのスタイリストさんて、もしかしてリューマの初恋だって言ってた人かもしれない。
「あ、本人から聞いた事あります」
「そのスタイリストさん、トレーナーの緒方さんと結婚して独立されたんですよ」
やっぱり、そうだ。
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