第1章

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「リューマ」 私がリューマの名前を呼ぶと リューマは小さくビクッと体を揺らした。 私はスマホを鞄から取りだしてタレント事務所からのメールを表示した。 そして契約内容が簡潔に書かれてある文面、そして契約するにあたっての流れ、交通案内などの詳細が記されてあるメールボックスを開いて リューマに見せるように手渡した。 その時、ずっと背けていたリューマの顔が視界に入って 一瞬息を飲む。 リューマの綺麗な顔に痛々しいほどの深い陰りがあって、目が充血して潤んでいたから。 リューマ……… 泣いてた………? その様子に軽い動揺を覚えたけど 瞬時、ニットシャツから覗くリューマの首筋のキスマークを見たら、 再びすーっと心が冷めた。 「これ、転送するから、面接、契約日を決めて事務所に行って?」 「………………」 「もう、リューマには何の選択肢もないの、分かるよね? 私は、違う店舗のGrosslyに指名客を誘導するから、ヨシと相川さんとも会わないようにする。 ………いいよね? あと、リューマのマネージャー管理は今後一切リューマ自身が管理して」 リューマは私のスマホを手にしたまま微動だにしない。 「ちなみに明日はGrossly本社でイベントの打ち合わせがあるからリューマだけで行って、そして近日中のスケジュールも把握しておいて。 私は一切関わらないから。」 私は冷たい声音でそう言い切ると小さく息をついた。 そして何も言葉を発しないリューマに、 承諾を得たと自分で解釈して 私は着替えてもう寝てしまおうと腰を上げた。 そしたら不意に手首を掴まれ、バランスを崩し、再びソファに沈んだ。 「ミユキ………。 オレこのままじゃ、仕事どころじゃない」 リューマから発せられた声は悲痛で苦しそうに掠れていた。 「そんな、大人気ない事言わないで」 私はそれには動じずに、静かにそう言った。
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