第1章

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なかなか寝つけないでいたけど、 明け方くらいになってやっと眠れたようだった。 スマホのアラームで意識が覚醒してきて いつもと変わらないような朝だったけど、 胸の痛みはしっかり残っていた。 いつまでも感傷に浸ってても、朝は必ずやってくるわけで。 仕事もあるから泣いてばかりもいられない。 起きなくちゃ………。 ご指名のお客様に今までのN支店からほど近いJ支店にご来店して頂くために なるべく早い時間にご連絡を入れて ご足労をお詫びしなくては………。 相川さんみたいな人とは2度と顔を合わせたくないから。 ヨシには申し訳ないけど。 私が移動するだけで売り上げも持って行ってしまう事になる。 私は心労でどっと疲れた体を起こす。 ベッドから出ようと足を外そうとしたら腕をリューマに掴まれる。 リューマは寝起きでもなさそうな顔で うつ伏せで頭を枕に突っ伏せた体勢のまま 私の腕をつかんでいた。 目がバチっと合うと、リューマは一睡もしていなかったんじゃないかってくらいの 冴えない表情で目は充血して潤んだ瞳のままだった。 睫毛の長いアーモンドアイに鼻筋通った天使のような綺麗な顔立ちのリューマ。 いつでも見惚れてしまうその容姿は私にとってもう悪でしかなかった。 この人の惹き付ける容姿のせいで 私はいつも不安に陥っていたのだから。 ………そして昨日は不幸に陥れられたのだから。 信じてって言われて信じて あっさり裏切られた。 リューマ、本当に酷い人だね。 「ミユキ………そんな目でオレを見ないで」 リューマが居たたまれない表情でふーっと小さく息を漏らすと 瞳に深い陰りと自己嫌悪の色を見せた。 私、無意識に蔑む視線を投げていたらしい。 腕を力強く掴まれていて身動き取れずに困惑していると リューマがその腕を離そうとしないまま自身も体も起こした。 そして一瞬にして腕を引かれて ベッドに仰向けで倒れ込んだと同時に リューマが、覆い被さってきた。
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