第1章

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「そうやって、過去にセックスした男と今でも接触している方が、よっぽどタチが悪いと思わない? ミオと不本意に間違って肌重ねてしまっただけで………オレばっか責められて。 おかしくない?」 リューマはじっと私を見据えて 忌々しく言葉を吐き出す。 瞳には激しい苛立ちの色を滲ませて。 「相川さんとヤッたって認めるの?」 私もリューマの瞳を捉えて見返した。 私の言葉にリューマは大きく目を見開く。 「だから………ヤッてないって………肌を重ねたっていうのは……」 「そんなの分からないでしょ?! お互い裸であんなに体が密着していて、顔も寄せ合っていて、ヤッてなかったなんてどうやって証明できるの? 酔っていて覚えてないだけ………かも………しれないじゃん うっ………」 込み上げてくる嗚咽で思わず顔を覆う。 泣きたくないのに。 もうイヤだ……… 「ヤッてないって言ってんだろ! 信じてくれないの? 愛してるのはミユキだけだって……… 何度も言ってるのに……… オレって………そんなに………信用なかった……の………?」 荒い口調から徐々にフェードアウトするように声が小さくなっていって、 私に近づいて 両手を伸ばし 肩をつかんで 引き寄せて 力強く抱き締めた。 顔を手で覆ったままの状態で 泣いていた私はどうする事も出来ずに 抱きすくめられたまま 嗚咽して ただ立ち尽くした。 リューマの乱れた吐息が 髪にかかり、肌に伝わり 腕は小刻みに震えていた。 リューマも今 泣いているーーーー。 信じたいよ。 でも、まだ受け入れられないよ。 あの光景はあまりにも衝撃的過ぎたから。 「もう、仕事に行かなくちゃ」 私がそう言うと、リューマはゆっくり私から腕を離した。 「リューマも、遅刻しないようにね」 「……分かった。」 リューマの声は生気がなかった。 夫婦の絆は深いんだって思ってた。 こんなに脆いものだなんて 思いもしなかった。
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