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「そうですか……。 J店に異動されますか。
N店で何か問題でもありましたか?」
人事部の佐藤さんが訝しげにメガネの縁に手をやりながら訊いてきた。
「いえ……あの。ちょっと、スタッフとトラブルがありまして、人間関係潤滑のために、自主的に異動を考えました。」
ここの会社は、人材確保の為に、人間関係の潤滑を重要視していて、人間関係のモツレがあれば、異動の希望はすぐ訊いてくれる。
「指名のお客様にはJ店に足を運んで頂くようにご案内しますので」
「そうですか。リューマさんはどうしましょう? 今月はN店にPRで入って頂いていますけど同じくJ店に異動の方がいいですよね?
須田さん、リューマさんのマネージャーもされてますし……」
「あ、いえ。今日から私、リューマのマネージャーをおりますので、今日リューマがここに出社したら、今後の彼の日程、私抜きで決めて頂けますか。
これからは本人に任せようと思っています。」
「……?…… 分かりました。
そうしたら、本日から須田さんはJ店に異動という事で手配しますので、J店の店長にもその旨は連絡入れておきましょう。」
「よろしくお願いします」
佐藤さんが、向かい合っていた席から立ち上がり、デスクに戻ってパソコンを操作し始めた。
私は事務室にあちらこちらと掲げられているリューマのPR広告のポスターを見上げた。
ポスターの中のリューマは、
こうして見ていると私の夫だなんて思えないほど
違う世界に住んでいる人に見えた。
じっと見つめていると、切なさが込み上げてきて思わず目を逸らす。
そして目を逸らした先には、この間撮った写真がすでにポスターになって大きく掲げられていた。
リューマと相川さんの恋人同士を演出したツーショット。
二人は顔を寄せて見つめ合っている。
美形のリューマに美人の相川さん。
ホンモノの恋人同士のように………。
悔しいくらいにお似合いだ。
胸に鋭い痛みが走る。
傷口がまた開いたみたいだ。
“ふれあう君の肌と髪 髪の香りに君を想う“
リューマが考えたキャッチフレーズが採用されていた。
“シナモン“は外されていたけど。
………私、やっぱりリューマとは不釣り合いだったんだ。
だから、こうゆう事になってしまうんだ。
下唇をキュッと噛んでまたそれから目を逸らした。
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