3人が本棚に入れています
本棚に追加
聖夜祭。
その日、私は彼に声をかけられた。
――大事な話があるので、後で僕の所に来てください。
真剣な表情で言われたものだから普段みたく少し弄ってみよう、と言う思考が起こる前に頷いていた。
―*―*―*―*―*―
「はぁ…」
彼に呼ばれて以降、胸中のモヤモヤが晴れず。
食事会…の前座で貰ったジンジャーエールを飲みつつ溜め息が溢れる。
そんな私に
「どーしたのさ?」
私が『代役』を努める“天枷”の一人、破理さんが声をかけてくる。
「別に何でも無いです。」
今、彼女のテンポに付いていく元気はないから軽く切っても。
「そんなわけ無いじゃん。物憂げにグラス傾けてさー。」
ニヤニヤと笑いながら隣に座ってくる。
「ちょ、破理さん酒臭いです…」
「あははー。そんなことよりさー。
『木原』の“完成品”が物憂げに何してんのーぅ?」
酔った弾みか、はたまた故意か。
私が敢えて公言していない『木原』と言う家系の暗い部分をさらりと呟く破理さん。
「ッ!」
思わず手元のフォークを彼女に振り抜くも、
「うふふ…零ちゃん。そんなものに縛られないで、自分の本心に向き合いなー。
『自分は人と馴れ合えない』そんな考えは捨てちゃうべきだよん♪」
ふら、と一歩下がりつつ呟いた彼女に傷ひとつつけられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!