零ノ思慕

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聖夜祭。 その日、私は彼に声をかけられた。 ――大事な話があるので、後で僕の所に来てください。 真剣な表情で言われたものだから普段みたく少し弄ってみよう、と言う思考が起こる前に頷いていた。 ―*―*―*―*―*― 「はぁ…」 彼に呼ばれて以降、胸中のモヤモヤが晴れず。 食事会…の前座で貰ったジンジャーエールを飲みつつ溜め息が溢れる。 そんな私に 「どーしたのさ?」 私が『代役』を努める“天枷”の一人、破理さんが声をかけてくる。 「別に何でも無いです。」 今、彼女のテンポに付いていく元気はないから軽く切っても。 「そんなわけ無いじゃん。物憂げにグラス傾けてさー。」 ニヤニヤと笑いながら隣に座ってくる。 「ちょ、破理さん酒臭いです…」 「あははー。そんなことよりさー。 『木原』の“完成品”が物憂げに何してんのーぅ?」 酔った弾みか、はたまた故意か。 私が敢えて公言していない『木原』と言う家系の暗い部分をさらりと呟く破理さん。 「ッ!」 思わず手元のフォークを彼女に振り抜くも、 「うふふ…零ちゃん。そんなものに縛られないで、自分の本心に向き合いなー。 『自分は人と馴れ合えない』そんな考えは捨てちゃうべきだよん♪」 ふら、と一歩下がりつつ呟いた彼女に傷ひとつつけられなかった。
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