始まりの章

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キースはただ黙って大雨に身を任せた。この冷たい滴が自分の熱を冷めてくれるようで気持ちがいい。 「……」 彼は雨のせいで額に張りついた髪をかきあげ再びピンズを見下ろす。彼は未だに動かない。勿論、死んではいない、気絶しているだけだ。 しかし、これだけ痛め付けたのだ、当分は自分に歯向かおうとはしないだろう。 キースは木の根に置いておいた鞄を掴むと肩に引っ提げた。 「さて、帰るかね」 誰ともなく呟いて歩を進める。 ―その時 「!?」 最初は瞬くような閃光だった。次に黄金色の光が空に立ち上った。 「……」 キースは暫くの間唖然としてたがはっ、と我に返った。 「な、何だこれっ」 思わず大きな声を出す。生まれてこのかたこの現象は初めてみる。 まだ光の柱は消える気配はない。彼の中で好奇心が芽生えた。 「…行ってみるか」 気づけばその方向へと足を運んでいた。 ―――――――――――――― 光は森の奥の方から発していた。キースは間近で見るために全力でかけているがこの光は一向に消えることはない。 「一体向こうには何があるんだ!?」 初めての体験に笑みさえ浮かべていた。 もはや先の喧嘩の事など忘れていた。キースの頭の中にはこの光のことしかない。
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