3人が本棚に入れています
本棚に追加
半ば叫ぶように言うキース。一刻も早くこの感覚を取り除きたかった。
「・・・・・・」
少女は再び黙りこむ。かと思えばいきなりキースに背を向けた。そしてそのまま歩き出す。まるで話は終わったと言うように。
「おい、話は終わってねぇぞ!」
話を勝手に中断し、立ち去ろうとする少女に怒りが湧き、追いかけて彼女の肩に手をかける。そして少女を振り向かせた。
「てめぇなんとかいい―――」
彼女に怒りをぶつけようとしてそれを止めた。いや、止めさせられたのだ、少女の瞳に。彼女は彼をみつめていたがその双眸は彼自身を見ていなかった。それは彼に興味がないということ。いや、元々興味などなかったのだろうが。
「・・・何かしら?」
ただ淡々と言葉を紡ぐ少女。彼女の表情を見て、いつの間にキースの怒りは収まっていた。
「い、いや何でもねぇ。・・・悪い」
肩から手を離しその場から逃げるように背を向ける。だが大事な事を思いだした。
「そうだ、お前名前はーーー」
振り向き、少女の名前を聞こうとしたがすでに少女の姿はなかった。残ったのはキースと風によって揺れた葉の音だけだった。
――――――――――――――――――――――――――
「痛てて、あの野郎また腕あげたな」
キースは鞄を肩に下げ、帰宅路を歩きながら顔の傷を擦る。
最初のコメントを投稿しよう!