0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ライバル」
貴志は競馬学校の上級生に対して
勝るとも劣らない程の優れた乗馬技術があった。
馬術競技会「JapanOpenIn 東関東」
東関東ホースパークⅢグレードジャンピング競技
アマチュアチャレンジJEクラス競技/一般
この大会の注目は騎手、調教師として有名な父を持ち
完璧な乗馬を期待させる大樹の存在であった。
多くの記者、ギャラリー達が集い、地方局ながらも
テレビ局が中継をする程、会場は異様な熱気に包まれていた。
それはまるで「ファンの集い」でもあるかのようだった。
応援幕と声援の中、大樹が騎乗すると手を挙げ軽く会釈をした。
「キャー大樹さまぁ!」
この黄色い声援と大樹のクールな態度に会場はざわついていた。
「若きプリンス現る」
「競馬界を担う新星降臨」
雑誌記者達も既にタイトルを準備、大樹の優勝を疑わなかった。
競技が始まった。
(今日はいい天気だな。風が気持ちいい)
貴志の心は無垢だった。
大樹の存在を意識しないと云えば嘘になる。
だが、大樹と争うつもりはなかった。
(自分のスタイル、技術の全てを出せればいい)
馬というものは敏感な生き物。
会場の熱気で、殆どの馬達が多量発汗をする「入れ込み状態」だった。
最初のコメントを投稿しよう!