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健祐は貴志の横面を叩いた。
「バカヤロウ。その殻に隠る態度が気に食わねぇ!」
「俺は・・・・・・俺達は・・・・・・」
「貴志と一緒に卒業して騎手になりたいんだよ」
「辛い時に支え合うのが仲間じゃないのか?」
「俺だって完璧な人間じゃない」
「大樹の様に注目される存在になりたい」
「でも、でも・・・・・・」
健祐が歯を食い縛りながら泣き始めた。
初めて見た。親分肌の健祐から想像できない姿だった。
健祐にも悩みがあったのだ。
(そうか!コイツは今まで見せていなかったんだ)
貴志は涙する姿に「深い友情」「絆」を感じ取っていた。
藪教官が近寄ってきた。
「こら!お前等、部屋に戻れ」
そして・・・・・・
ふたりの肩をポンポンと叩き、頷きながら言葉を漏らした。
「いい仲間に出会えたな」
ふたりの尻を再び、順番にポンポンと叩いた。
教官の後ろ姿にふたりは最敬礼をした。
「はい。ありがとうございます」
厩舎から馬が嘶(いなな)き
そして蹄(ひづめ)を鳴らしていた。
それは互いの「絆」を讃えている様だった。
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