白薔薇の涙

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マスコミは「天才女性医学者」から一転して「稀代の女詐欺師」と書き立てた。 新しい万能細胞の発表時から外には出にくくなったけれど、不正疑惑が懸けられてからは、まるで銃剣のようなマイクや催涙弾さながら目の眩むフラッシュを連射するカメラを手にして私を追いかける人たちが増えた。 一方、マンションの駐車場に止めていた車は、ガラスというガラスが全て叩き割られ、ボンネットにスプレーで大きく「死ね」と落書きされていた。 誰かが勝手に入ってきたのか、それとも同じマンションに住む人の仕業なのかは知れない。 とにかく、もう、部屋を出なくてはいけないということだけは分かった。 攻撃の矛先は家族にも及び、父の経営するクリニックは閉鎖に追い込まれ、母は教授を務めていた大学に辞表を出した。 兄は勤務先のERで慰留されたものの、婚約を破棄された。 先方の親が「久保方を名乗る家とは繋がりを持ちたくない」と言い出したのだ。
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