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「もうすぐお祖母ちゃんたちの所に行くから」
花束の根元に結ばれた水色のリボンが風に吹かれて揺れている。
自殺すると成仏できないというが、自分には今の生こそがもう地獄だ。
この先、生きたところで、ここまで大々的に詐欺師のレッテルを貼られた研究者を受け入れる機関などどこにもない。
ずっと医学一筋で生きてきたのに、今更、他の道など考えられない。
世間にしたところで、私には死んでもらった方が、万事、都合がいいのだ。
久保方明子は悪辣な詐欺女と決まったのだから。
もう涙は尽きたと思っていたのに、また視野がぼやけてくる。
専門に研究したことはないが、咲きかけの薔薇の香りにはもしかすると催涙効果があるのかもしれない。
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