第1章

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 以下、その資料の内容を掲載していく。今となっては全てが水の泡であるが、それらの資料の中に、もしかしたら、事件の真相に行き着くヒントがあるのかも知れない。  夕闇町の伝説  この本は、夕闇町の歴史について記した書籍である。かつては夕闇町にある公民館で閲覧できたが、事件の影響でほとんどが紛失してしまった。残ったのは一冊だけであり、警視庁に保管されている。以下、その本文である。  夕闇町は江戸時代からその名が確認されており、かつては夕闇村と呼ばれていた。幕府から離れた山村であり、それゆえ、当時の権力者である、徳川家の支配を受けることなく、まるで鎖国のような状態だったという。そこでは、夕闇村だけの決まりがあり、それを破った者は村八分にされてしまう。  夕闇村の全ての決まりをここに列挙することは不可能であるが、代表的なものとして、村で最大の権力者たる、御手洗家に逆らうことは万死に値するとされていた。御手洗家がいかなる力を持っているのか、外の人間からは全く推し量れないが、どうやら、村に古くから伝わる伝説と関係しているらしい。端的に言えば、村を苦しめる妖怪を、御手洗家の男が対峙したというものだ。  奇妙な話だが、この妖怪を倒した後に、御手洗家の男は暴君と化し、村を苦しめたという、そして、それから数年後、男の弟である、同じ御手洗を名乗る男によって、暴君と化した男は対峙された。それ以降、村では御手洗家の弟を英雄として扱い、今日に至るという。何故、素直に御手洗家が妖怪を退治して終わりとしなかったのか、疑問は尽きない。  夕闇町には、まだ村を名乗っていた頃から、因習とも言うべき、ある災害が頻繁に発生していた。それは集団ヒステリーとでも言うべき、大規模な暴動である。村人同士が突然、互いを殴り合い、時には殺人にも至るという。
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