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その日俺は思い出した。
しんしんと雪が降る街で、
俺は声をあげて泣いた。
第一夜
ジリリリと大きな音を立てる目覚まし時計に手探りで手を伸ばし、音を止める。
ちらりと布団の隙間から時計の針の位置を確認して、仕方なく上体を起こす。
くわりと欠伸をして、髪をがしがし掻いていると、近くで寝そべっていたゴールデンレトリバーのチョスケが尾を振った。
「おはよう。チョスケ」
柔らかな黄褐色の毛並みを撫でてやって、服を着替えている間にちゃっかりとチョスケの口には赤い散歩用のひもがくわえられていた。
「よし、行くか。」
ひもを受け取ってチョスケにつけてやると、嬉しそうに尻尾を、パタパタと振った。
机の上の鍵を手に取り、玄関に向かう。
俺の後についてくるチョスケが急かすように、わんと鳴いた。
いつもと同じ時間、いつもと同じ音、いつもと同じ光景。
かといってつまらないわけでもなく。
それが俺のいつもと変わらない日常だった。
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