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「土産だ ――…」
八木邸で子供らと遊んどるこいつに、どこぞで貰うた土産を渡すんはあの芹沢筆頭局長。
「わ~い、為三郎くん、勇之助くんわけっこしよ~」
こいつはどこの餓鬼なんや?
確か、歳は俺の二つ下で立派な中年増……
「志桜……総司忘れとる」
「じゃあ、四つにわけようか?」
「烝は?」
「いらんのやないか?」
「烝さんはたまにしか甘いの食べないんだよね……特に落雁は甘いから食べないんじゃないかな?」
勝手に三人で話を進めとる。
まあ、そのとおりや……なんでか昔から甘いもんは苦手なんや。
「俺ら、総司よんでくるー」
「じゃあ、お茶入れてくる~」
ぱたぱたと三人足音立ててかけて行く……
隣の部屋からは笑いを堪える気配。
…芹沢局長も人の子なんねんな…
八木邸には種火があるから一人で平気やろ……
八木邸には八木一家と芹沢派しかおらん。それと反して沢山の隊士がおる前川邸では種火は厳禁。
あり得へんけど、いつ何時全隊士が出動するかもしれんとか何とか……
それは建前で、この人数を無償で受け入れてくれとる前川邸で火事をおこさんようにっちゅう副長の配慮やったりする。
「…すすむさーん、種火を消して…しまいました……」
(……やりおった)
「……火つけんの面倒なんやで?」
そうは言うてみるも俺にとってそれは至極簡単な事で。
火打石を思い切りぶつけて火花を起こし、油をしみこませたもぐさに着火させるだけなんやけど……
それを釜戸に入れるだけや。
せやけど、未だに火をつけられんこいつ。
「ちゃんと、烝さんのお茶もいれますから……」
最初から俺ん分も芹沢局長の分も湯呑みが用意されてんの知ってんやで?
今頃堪えた笑いを漏らしているであろうあん人もこいつの茶待っとるやろし。
知っとるけど知らん振りしたる俺も大概こいつに甘いやないか……
きっと その 落雁より甘いで?
*fin*
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