1 crumble to nothingness

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「・・・わかりました。どうぞお任せします。」 そう言って首をふると、茜さんは楽しそうに笑った。 「ん、じゃあカッコよくカットもしてあげる。染めるの失敗したら私がお金負担するつもりで!」 「ははは、よろしくお願いします。」 そう言って茜さんは準備をし終わると、鋏を入れた。 シャキン、シャキンとハサミの音がする。 店内に流れる落ち着いた洋楽のバラードと混ざって、音楽を奏でているかのように。 俺は鏡越しに茜さんが鋏をいれる姿を見ていた。 流れるような指先。 この動きをしている人と、さっき強引にここまで連れてきた人が同一人物だとは思えなくて、笑みがこぼれる。 それと同時に。 ・・・久し振りに笑ったな・・・と思った。
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