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松本さんの言葉の真意はわからずに、失意のまま私は藤永さんに連れられ高速バスに乗り込んだ。
『美和ちゃんに見せたい場所がたくさんあったのに、3人でゆっくりして夕方に帰りたかったのにね』
『藤永さん…街を見て良いよ、このバスに乗っていれば帰れるんでしょ。1人で帰れるから』
『バカな事を言わないの』高速バスは発車し流れゆく景色をただただ眺めた。
心ここに有らずの私を乗せて…
バスは終点をむかえ着いた頃にはお昼で、藤永さんが吉野家に連れていってくれたけど、味がまったく感じられないままご飯を口に入れた。
私は告白もされないまま、告白もしないまま…
失恋した事になるの?…
吉野家を出て藤永さんは私を座らせ、電話をかけた。『出ない…運転中なら着信を見て電話があるかもしれないわ』
藤永さんがタクシーをひろい私達は家・マンションに帰ってきた。
『ありがとう』
タクシー代は藤永さんが払ってくれて、私達はタクシーを見送った。
お父さんがその光景を見ていて、藤永さんにお礼を言っていた。
『松本さんはどうしたんだ?一緒じゃないのか?』
『うん、一緒にこっちに帰ってきて仕事が入ったとかで別れたの。だから藤永さんとタクシーなんだぁ』
『そうか…美和の為にたくさんの人が動いてくれたんだな。楽しかったか?K出版社』
『うん、楽しかった。K出版社行きを許してくれてありがとう、お父さん』
藤永さんがその会話を聞いていて何も言わずメアドと電話番号のメモをくれた。『電話して』
そう言ってマンションに帰っていく藤永さんを私はただ見つめていた。
夕方になろうとしていた。カリカリを食べるミロの側に座り私は泣いた。
『ミロ、私失恋しちゃった…松本さんにとって私はお守りをされる女の子と変わらなかったのよ』
カリカリを食べてミロが私を見上げニャーと鳴いた。
慰めてくれるの?
泣き顔を見られたくないから早めにシャワーを浴びた。
色が変わった両胸が昨日の出来事は本当だと告げていた…
私は失恋しちゃったんだ…
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