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と冷めた瞳でそう言った。冗談でもなんでもなく、少女は本気でそう言ったのだと少年は思って、そして見抜かれた気分だった。
自分の本心を、建前で塗り固めた本音をたった一言で見抜かれた気分だった。自分が笑いたくもないことで笑い、やりたくもないことをやって周囲にバカだと思われるように演技していることがバレてしまった。
少年には特技がなかった。他人に自慢できるものが何一つとしてなかった。親はそんな少年の才能に期待して、あれこれ習わせたけれど、どれも長続きせず途中で終わってしまう。
少年は思う。僕がバカだからいけないんだ。バカでダメで出来損ないだからいけないんだと思ったけれど、いくら頑張っても努力は結果にならず、親はいつしか少年を相手することはなくなった。
父親が言った。
『お前は何をやっても時間がかかるんだから、頑張らなくていい』
母親は言った。
『そうね、いくらやってもどうせ、焦って失敗するくらいなら最初から頑張らなくていいわ』
とあれだけ期待しておいて、やりたくもない習い事をさんざん押し付けておいて、あっさりと手のひらを返す両親に落胆すると同時に少年は『自分がいらない存在』『愛される価値のない、無価値な存在』だと強く意識するようになった。
悲しくもあり、そして少年の中で何かがプツンと切れた。
『じゃあ僕がこれから何もできない役立たずだったら、もう死ぬしかないのかな?』
もちろん、それはイヤだった。死にたくはないけれど、両親に見捨てられることはそれはもう死ぬことと同じだ。隣の家のおじさんが、よく吠えてやかましいペットの犬を首輪をつけて、トラックに押し込んで行ったように、犬は二度と帰ってこなくて、おじさんは『保健所』に連れて行ったと言っていた。
保健所がどんな場所なのかわからないけれど、きっと嫌な場所なのだ。そうに違いない、もしも自分も同じようになったらどうしよう? 首輪をつけられて車に押し込まれて、親と離れ離れにされて、自分が無価値な存在だと思われたらどうしよう?
たまらない不安にガタガタと身体が震えた。親の言う『頑張らなくていい』という言葉が重くのしかかる。
『頑張らない子』はいらない、『頑張れる奴』だけが必要とされる。『ダメな自分』はいらない。『いい自分にならなくちゃいけない』少年は考えた。なれる自分を考えた。周囲に必要される自分を考えた。死にそうだったから、
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