第1章

2/13
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「犯人はこの中にいるっ!!」 昼下がりの教室、田舎町の中学校、それこそ両手で数えるだけて生徒人数が足りてしまうような少人数制のクラス、三年生二人、二年生一人、一年生三人の愉快なクラスメート達が午後のかったるい掃除を終えて、あとは放課後を待つだけだと雑談に花を咲かせていたとき、それこそ原住民の夜襲でも仕掛けてきたんじゃないかと思うような怒号が響き渡ったのである。 その中で雑談に混じることなく、一人、ヘッドホンをして耳を塞いでいた僕こと、役場達也(やくば、たつや)は一瞬、遅れて怒鳴りつけた奴をみて露骨にまゆを寄せた。本音を言おう、関わり合い煮なりたくない奴がそこにいた。本音は言えないけれど、怒鳴りつけた奴は僕らの担任教師、山本陽気(やまもと、ようき)だったからだ。名前は陽気と言うけれど、どっちかと言うと怒気のほうが似合う。がっしりとした体格と砂漠化を始めた頭皮とは裏腹にもっさりとしたヒゲが特徴的な教師だ。 僕は彼が苦手だ。いや、僕は対人関係において得意な相手なんて家で飼っている子猫のこーさんくらいだけれど、この山本はその中てもダントツで苦手な相手だ。まず人の話を聞こうとしない、なんでもさっさと進めればいいと考えてる性格からして、マイペースを座右の名にしたい僕とは合わない。話、そのものが噛み合わないから仲良くなるきっかけもない。正直にいおう。あのヒゲを焼きたい。 なーんて嘘ぴょんと可愛くもないのに、可愛くしているとようやく状況がつかめてきた。どうやら山本教師はこの教室にテストの答案用紙を置き忘れてしまったらしい。それだけは教師のうっかりで済まされる、ようは取りに来ればいいだけなのだ。 問題はそこからだった。山本教師のセリフを借りるなら、 「犯人はこの中にいる!!」 よーするにテストの答案用紙がなくなった。全校生徒六人の答案用紙が全てなくなった。全校生徒中、五人がいた教室の中でな答案用紙がなくなったのである、そして山本教師の次のセリフは、 「犯人が見つかるまで絶対に家には帰さないからな、全員。ここにいろ!!」 と横暴きわまりないものだったけれど、このクラスの教師に逆らって犯人扱いされたくはなかろう、僕もそうだ。誰もが顔を見合わせる中でやれやれと僕はヘッドホンをしたまま立ち上がる。ここでの三年生は僕なのだ。後輩達から期待に答えなければならない。本音を言おう。めんどうだけれど、
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!