第1章

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ワカリマス。ワカリマスと頷いておいた。怒られました。あえて確認すると教室を掃除してたのは、僕と二年生の男の子と一年生の女の子だ。と、こうして見てみると怪しいのは僕ら三人ということになる。 「でも、えーっとほら、わかったことがあるじゃないっすか。ここには答案用紙はなかった、だって僕が不慮の事故で花瓶を倒したせいで、不要なプリントが『濡れてる』し、こうなったらさすがに気がつくでしょう」 と僕は端っこが濡れて湿ったプリントを差し出す。 「つまり、ここにはなかった」 「いや、こう言えるだろう。ここに置かれていた答案用紙に花瓶を倒して、濡らしてしまった犯人は発覚することを恐れてどこかに隠した。違うか? つまり、お前だ」 と山本教師が名探偵のように僕をゆびさす。弁解も言えず、ぐぅの音もでなかった。ちくしょう、ごまかせねぇ。いや、僕は犯人じゃないけれどね。推理小説の語り部たる僕が犯人なわけがない!! と主張しても疑いは晴れそうになかったので、言い訳、開始。 「確かにそうかもしれないけれど、びしょ濡れになった答案用紙を見られることなく持ち出せるでしょうか? 掃除をしていた生徒は三人、うちの二人の視線をかいくぐり、どこに隠すと言うんです? これだけ探したのに見つからない。こうなったら校舎全体にまで捜索範囲を広げなくちゃーいけませんね。ハッハッハッハッってことでここは一つ。あの人を呼びましょう」 山本教師がグッと眉間に皺を寄せた。可愛い後輩達が視線をそらす、誰もが頼ろうと思っていたけれど、あまり頼りたくない相手、僕ともう一人の三年生して不登校児、保健室、登校者。人は彼女をこう呼ぶ。 「しりとり探偵をっ!!」 困った時は友達を頼ろう。そう言って僕は足早に教室を出た。このまま行けば必ず僕が犯人にされてしまう。これは一大事とがむしゃら保健室に走って、扉を開けた。 「ゴリラ」「ラッパ」「ルービックキューブ」「部室」「積み木」「切手」「手甲」「腕」「ディレクター」「タッパー」「パラダイス」「スモッグ」「グラビア」「アジア」「明太子」「魔物」「ノックアウト」「取り押さえ」「エコ」 「ココア」「アナウンサー」「財布」「不戦」 「あなたの負けね。さあ、お帰りなさい」 「いや、白鳥しりとり、僕はピンチなんだ」 「黙りなさい。空気が汚れます」 「澄まし顔で言ってもダメ。ダメなものはだめなのさ」
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