第1章

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しりとりは『ん』がついたら終わりなのだ。保健室から彼女が出て行く、その後ろ姿を追いかけて僕も出た。 「運河」「画商」「海」「港」「鳥」「漁」「馬」「祭」「スランプ」「プリント」「トング」「グルメ」「明治」「花瓶」「家業」「噂」「鮫」「牡蠣」「狐」「猫」「コント」「トリオ」と廊下を歩きながら白鳥としりとりをする。ぴったり教室の扉にたどり着いた。手順は彼女に回る。 「お待たせしました。答案用紙、盗難解決に参上、しりとり探偵こと、白鳥しりとりです、どうぞ、よろしく」 みんな知っとるがなとツッコミはやっこない。みんな黙っている。たぶん、会話を始めてしりとりに巻き込まれるのが嫌なんだろう。僕もそれでいいと思う、しりとりが上手く回らず、彼女の機嫌を損ねれば回れ右して帰ってしまうかもしれないからだ。 「詳しく説明してよ、答案用紙はどこにあるの?」 「ノー、疑問を投げかけないように、この低脳幼なじみ、お前は黙ってみていればいいのよ、返事」 「じーっ口にチャックしてますよ」 実際に口に手をそえて黙る。白鳥しりとりは教室にいるメンバーに視線を向けるとコツコツと教卓に向かって歩いていった。 「よろしいて、みなさん、このアホな幼なじみから話を聞く限りではこの教卓に答案用紙は置かれていた可能性が高いとのことですが、私もそうだと思いますが、どこに置かれていたかが重要かのです。たとえばこことか……ここに花瓶が置かれて、そして倒れために、プリントは塗れてしまった。特にここ、 と白鳥しりとりは不要なったプリントを入れておくための箱を指さした。その箱は教卓の隣、生徒用の机を隣に並べた上に置いてある。花瓶が倒れたのは間違いない、僕が見ていたからだ。花瓶は倒れた間違いない 「この濡れたプリントと、花瓶が置かれていた位置、いつもは花瓶は教室の窓辺に置かれていたそうですね。向かって窓側のほうに、なのに今日はなぜか教卓の上に置かれていた。なぜかしら?」 窓側のロッカーの上にいつも花瓶は置かれていた。答案用紙を探すことばかりに夢中で気にかけていなかった部分が浮き彫りになってくる。 「可能性は二つ、ロッカーの上を雑巾で拭くために教卓の上に移動した。もしくは『ロッカーの上に置かれていた答案用紙を移動するために使った』か」 「どういう意味だ。答案用紙を持ち歩くためにどうして花瓶を使う必要がある。まさか、中に詰め込んだとか
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