第1章

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言わないだろうな、そんな馬鹿げたことがあってたまるか」 「…………………」 白鳥しりとりは答えない。山本教師の言葉を無視して、不要になったプリントと入れの箱を見ている。イライラが最高に達し始めたのか怒鳴りつけそうになる前に僕はフォローを入れる。このままでは会話が途切れてしまう。 「花瓶どこにあったかと言われると、正直、教卓の上にあったか自信はないなぁ。気味はどう思う?」 と掃除中に野球の相手をしていた、二年生、男子に問いかける。上手く繋げよ。 「う、うん、よく覚えてない、あった気がするし、なかった気がするし」 曖昧だなぁ、おい、でも、そうなのだ。イライラが収まらないっぽい山本教師の凶悪な顔から視線を逸らしながら僕も思い出す。掃除の時、教卓の上に『花瓶はあったか?』いや、あったんだから、実際に倒れたんだろう。そのためにプリントは濡れてしまったんだから、 「知っていることなら全て話せ、掃除の時に遊んでいたのは、お前たち二人なんだな、残る一人は一年しかいないじゃないか、お前ら先輩としての自覚はないのか」 お前には教師の自覚をもっと持てとは言い返せないけれど、白鳥しりとりが口を開いた。 「枯れ木は黙っていなさい。確認しておくけれど、花瓶は倒れた、でも割れなかった。この意味を考えれば自ずと答えは出るわ」 割れなかった。そもそも僕は花瓶が倒れるところを見たのか? プリントが濡れているからそこで倒れたと錯覚しているだけで、まさか 「割れる? ってことは、つまり、花瓶は誰かが意図的にひっくり返した? 倒したのではなく、なんのために」 それなら割れないが、ひっくり返す意味がない。というか、白鳥しりとりの言う答案用紙の移動もわかっていないのだ。 「二点ね。犯人は花瓶をひっくり返すつもりはなかった。それを持って移動している最中に遊びまわってたアホとぶつかりそうになりうっかり傾けてしまっただけのことよ。それと答案用紙の移動方法は答案用紙を中に押し込めたのではなく、外にクルリと巻くようにして持ち出した、そうすれば花瓶の水を入れ替えるふりをして外に持ち出せるでしょう」 ああ、と頷きそうきなりながら僕は気がつく、このまま行けば犯人はあぶり出されてしまうだろう。 今まで一言も話すことなく、怯えた子犬の用にこちらを見つめる一年生の女の子を、彼女が犯人だと決まってしまう、僕は考える。、この事件は
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