第1章

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女子打ったから庇おうと思ったわけではないし、決定的な証拠はないのだから『犯人』が誰だろうと構わない、それなりの言い訳と動機さえあればあとは口八丁、手八丁でごまかす、所詮は現実の謎解きなんてこじつけにしかならないといういい見本だけれど、年下の女の子を犯人にして攻め立てる状況をよしとするそど僕も悪人になれなかった。江戸時代の侍さんのように切り捨て御免とはいないのだ。 実際、推理小説のトリックだって運や偶然が絡まなければ成功はしないと聞いたことがある。小説だからこそ、できる荒技、そのほかにも料理漫画の料理をリアルに作ろうとしても、どこかでつまづいてしまうようなものだと考えればいい。ドラえもんの秘密道具がいくらチート道具というか、それら全て駆使すれば完全犯罪を実行できたとしても、ないものはない。 「だから、事件はおしまい。みんな、解散、お疲れ様っ!!」 「何がお疲れ様だ。お前にはたーっぷりお説教が残っておるわ、馬鹿者が」 ですよねーと頷く、白鳥しりとりは付き合うきがないのか、さっさと教室を出て行った。その証拠に、 「鷹」「かかし」「神父」「プール」「ルーム」「ムードメーカー」「関東」「海辺」「ベーゴマ「マントヒヒ」「ヒント」「ランドセル」「ルーマニア」「アニメ」「メンテナンス」「スニーカー」「カマボコ」「恋」「イボ」「ボイスレコーダー」「ダイビング」「グミ」「魅力」「串」「執筆」「釣り」「料理」「理想」「運命」「居間」 とまるで、足音のように彼女のしりとりをする声が廊下に響く、僕はそれに合わせるように、 「待ち合わせ」と言った。 「生徒会室」 と彼女の返事が返ってくると同時に僕は山本教師に首根っこを掴まれて、職員室に連れて行かれた。 山本教師のながながとした説教を右から左に流して僕は天井のしみを数えていたけれど、時間はちっとも進まないまま、とある過去を思い出していた。 道化の少年と、天才少女の過去だ。 少年は周囲にバカだと見下されていた。いつもいつもバカなことをして、周囲の笑いをとる、お前はほんとにバカだよなぁと誰かが言うと、少年はさらにバカなことをするのだ。そうかい? 僕は頭が空っぽだからねぇーこれくらいしか、取り柄がないのさといつもケラケラと笑っていたでも、ある時、出会った女の子にこう言われた。 『ヘラヘラ笑ってて気持ち悪い。頭じゃなくて、心が空っぽなんじゃないの?』
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