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「おっ、雪じゃね?」
「え……?」
相楽先輩が言うように、空から細かな白い物が降って来た。
真っ暗な空に、白くて冷たい輝く結晶。
相楽先輩が、雪に触れようと両手を上に挙げた。
「そう言えば初雪じゃね?今年雪降るの。だからホワイトクリスマスイブ?的な」
相楽先輩の口元から、三年前に聞こえたあのメロディーが聞こえてくる。
「……っ」
「千夏、見てみろ。まだ降りたてだから細か過ぎて結晶の形になってな……」
「う……っ」
涙が溢れた。
溢れて、溢れて、溢れて止まらない。
相楽先輩の姿が、あの時の朔一に見えたから。
嬉しそうな顔で俺を見る。
その顔、その仕草が全て朔一に見える。
「千夏……」
相楽先輩の手が俺の頬に触れた。
「……ぅ……っ」
そして、目尻から溢れる涙を親指で拭ってくれる。
「我慢なんてもうするな……」
朔一、朔一、朔一。
「辛い恋愛なんてもうやめろ」
朔一……。
「俺が、側にいてやるから…。ずっと側にいるから…」
相楽先輩の顔が近付いて来た。
俺はゆっくりと目を閉じた。
(朔一…何で………)
何で会いに来てくれないの。
何で俺の側にいてくれないの。
「サクイチ……」
自分の意思関係なく、言葉が出ていた。
「千夏……」
唇が触れると思った時、相楽先輩の顔が離れて行くのが分かった。
「相楽先輩……。俺…俺は……っ」
泣きながら、震える身体、震える声で俺は相楽先輩に言う。
「そんなに、夏條咲が良いか…?」
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