第3章

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 俺は言いたかった事を朔一に伝える。 「お…遅いよー…っ……馬鹿ぁ」  そして、朔一の服を掴んで揺さぶる。  俺がどれだけ不安で、怖くて、大好きかが伝わるように。 「ごめん、ごめんな…。やっと日本に帰って来れたんだ……」  朔一が日本にいなかった事は知っていた。  新しい映画の撮影が海外でやっていると言う事を雑誌で読んだからだ。 「なんで……一言でも連絡くれなかったんだよ。俺…もう朔一の頭には存在してないんじゃないかって、今まで一緒にいたのは夢だったのかもって思えて来て……不安で、不安で、怖かったんだぞ」  何でも良い、連絡して欲しかった。  一言声を聞くだけでも良かった。 「ごめん…。あんな噂が出て、誰かと連絡取る事が禁止になったんだ…」  朔一が言うのはあの女優との熱愛報道だろう。  俺は、聞きたいけど聞くのが怖くてどうしたら良いのか言葉が出て来なくなる。
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