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「あの男が勝手にでっち上げたんだ。注目を上げるために。あの女もグルになって」
あの男とは、たぶん曽田寛治の事だと俺は直ぐに分かった。
「あの男に、噂の女優と付き合えと言われた」
「え……?」
俺は朔一の言葉に、息が出来なくなりそうだった。
「俺は恋人がいるからと言って断ったが、あいつはそれを無視して雑誌記者に嘘の熱愛報道を伝えた。一応あいつは俺の父親だと周りにばれているから、それが本当だと信じられ直ぐに広められた」
朔一は早い口調で淡々と言う。
「お泊まり…デートは……何だったの?」
俺はそんな朔一に、気になっていた事を聞いた。
「あの女、俺との熱愛を肯定したんだ。だから俺は何でそんな事を言ったのか問い詰めに行った……。それが罠だとも知らないでだ……」
朔一は悔しそうに眉根を寄せて言った。
「まさかそこに記者がいるとは思わなくて、俺はまんまと引っ掛かった。馬鹿だよな……」
朔一は後悔した顔を俺に見せた。
「馬鹿だ……」
俺は朔一に言った。
「朔一は大馬鹿物だッ。そんな時間があるなら俺に言えば良いんだ。あれは嘘だ、違う、デタラメだって俺に直接言ってくれたら良かったんだッ!」
「セナ……」
「俺は、俺は朔一がそう言ってくれたらちゃんと違うんだって信じるよ。だから……違うなら、違うって俺に言って、何でも俺に言って、一人で抱えてんなッ!」
「千夏…」
「俺は、どんな噂が流れても、東條朔一が好きなんだ。夏條咲じゃない、今、目の前にいるこの東條朔一が好きなんだっ」
朔一の胸板を小さく叩く。
俺の気持ちが朔一の胸にも届くように、想いを込める。
「千夏…ごめんな…。ごめん…不安にさせて…」
朔一は俺の額にキスを落とす。
「俺は、サクじゃないと…朔一じゃないと駄目なんだ……」
誰に告白されても、朔一の事しか頭に浮かばない。
相楽先輩も、朔一に似ているから流れ掛けた。
俺は最低な男だ。でもそれくらい、俺は朔一が好きなんだ。
ずっと、ずっと朔一だけを見て来た。
朔一だけを好きだった。
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