第3章

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「ぷはぁっ、……セナ…キス上手い…。何で…?」  朔一の顔が俺を疑うように見てくる。  俺はその顔を見て、可笑しくなって来る。 「サクが好きらから…他の女に負けたく無いらら……精一杯頑張ってうんだ…」  俺はキスの合間に舌を吸われ過ぎて呂律が回らなくなっていた。  でもそんな自分を気にせずに話し続ける。 「もっろ…サクが……欲りい……。離れらく…ない…」  甘えるように朔一に言う。  今まで我慢して来た事が一つ一つ叶っていく。 「俺も、離れたく無いよ」  朔一もそう言ってくれた。 「サク……」 「俺には千夏が必要なんだ…。誰にも渡したく無い…絶対誰にも渡さない……」  朔一の顔は本気だった。 「一緒に暮らそう」  朔一がそう言った。 「え……? 一緒に………?」  俺は朔一のその言葉に首を傾げた。  今、朔一は何て言っただろうか。 「千夏が側にいないと、俺はもう生きて行けない……」 「さく…いち……っ」 「もう、今日を一人で過ごすのは嫌だ……。ちゃんと、千夏と二人で過ごしたいんだ」  今日は、もう25日。  俺達の付き合い始めた三回目の記念日。  朔一がそんな事を気にしてくれていたなんて、俺は嬉しくて夢じゃないのかと頬を引っ張りたくなった。  でもそんな事をしなくても、これが夢じゃ無いと朔一の体温が教えてくれる。 「俺と一緒に暮らそう。千夏……」  朔一の言葉に、俺は頷いた。  頷くと、涙が下に落ちて積もった雪の上に落ちる。 「もう、離れたく無い……」  俺がそう言うと、朔一は嬉しそうに笑った。  それは夏條咲の顔では無くて、俺の大好きな東條朔一の顔だった。
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