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この話は少し長くなりますが、きっかけは高校二年の春頃です。
当時働いていたバイト先に、一つ歳下の女の子の後輩が入ってきました。
名前はUとします。
肌は白く細身で髪は黒く、笑うのが苦手な少し暗い印象を受ける娘でした。
Uは、バイトとして入ってきてから半年程経っても、要領が悪く中々成長しません。
その為、他の先輩達は面倒臭そうに適当に足払ったり、苛立ちからかちょっとした事で怒鳴ったりして、その度にUは泣きそうな顔をしていました。
当時、最も歳が近いという事で私がUの教育係になりました。
しかし実際は表面上という事で、おそらくは一番若い私に面倒事を押し付けられた感は正直少しありましたが、初めて出来た後輩に当時は満更でもありませんでした。
Uの相次ぐミスは相変わらず、いつも怒られてばかりで、挙げ句には"早く辞めろ"と言わんばかりに嫌がらせを受けていたと、後に聞きました。
それでも毎日、めげずに遅刻もせずしっかり仕事には来ていました。
そんなある日、たまたまUと同じ時間に仕事が終わり、二人で一緒に店を出た時、突然Uは改まって私に声を掛けてきました。
「多神さんだけは、いつも優しくしてくれてありがとうございます…」
正直言うと、優しくしたつもりはありませんでした。
ただ、自分もまだ下っ端という事で、怒らなかっただけでした。
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