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翌日。
シンとキリトは二人並んで、学園に向かって歩いていた。何故昨日の様に転移を使わないのかというと、シンが歩きたいから歩いているらしい。
周囲には多数の人々がごった返している。両端に立ち並ぶ土で出来た店。石を敷き詰めたような道路には、現在似たような格好をした人物も所々存在している。ちなみに現在の彼らの恰好は、黒いジャケットに黒いズボン。制服と言われるものを着用していた。
そんな時、遠くから一つの女子の声が聞こえてくる。
「いやっ!! 離してください!!」
「何が『いやっ』だよ。そんな可愛い声だして、誘ってんだろ?」
「そ、そんなわけ無いじゃないですか!! 離して!!」
「少しは静かにしろ。これから良い事してやるから。ほら、行くぞ」
「い、いやっ!! は、離してください!!」
どうやらナンパされているのか、はたまた連れて行かれるのか、一人の少女に対して男が三人、下品な笑いを浮かべ、少女の腕を掴んでいた。何はともあれ、少女が嫌がっているのだけは火を見るよりも明らか。だが周囲の人々は関わり合いになりたくないとばかりに、何も見ぬふりをして通り過ぎている。
「ちっ。ここもクズばかりだな」
「あ、シン!!」
舌打ちをしたイケメンのシンは、人間とは思えない脚力で下品な笑いを浮かべる男たちに近づいた。
「おいてめぇら、そいつを離してやれ」
「あぁん? 何だお前は?」
「俺の事などどうでもいい。良いから早く離してやれ」
「は? 誰がてめぇの指図なんか受けるか。行くぞ」
その瞬間、シンの姿が消える。次の瞬間には、一人の男が宙を舞っている光景がキリトの視界にあった。
「あ……」
「ん? あ、おい!! てめぇ、このやろぉぉ!!」
呆けるキリト。仲間の一人が吹き飛ばされた事に気付いた男は、一斉にシンに襲い掛かってくる。が、拳は届かず、一秒もたたぬ間に、二人の体が高々と宙に浮き上がっていた。
周囲は唖然としている。数秒遅れて、男たちの体が地面に落下。接触の際、鈍い音が周囲へと響き渡る。
「ぐぁ、はっ、いっ、いてぇ!! いてぇぇよ!!」
「うぐぁあっあ!! お、おかあちゃぁぁん!!」
悲痛な叫びを上げる男たち。時が動き出したかのように、ハッとなった周囲の人々の姿があった。
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