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「お呼びですか? マスター」
数分後、先程戦場を見下ろしていたであろう少年は、現在とある部屋の中にいた。見つめる先には黒の中に混じった白髪が見えるが、大量に積みあがっている書類の山によってその顔は見えない。
書類の奥に大きな窓があり、そこから取り込まれた光が、今は部屋の中を明るく照らしていた。
「あぁ、キリト君。君と紅蓮の覇王に話があるんだけど。紅蓮の覇王……いや、シンが来るまで少し待っててもらえるか?」
「あ、はい。分かりました。だけど来るんですか?」
キリトと呼ばれた空色髪の少年は、部屋の入り口にある、人が二人余裕ですれ違える幅を持つ木製のドアを見つめていた。
「多分くるとは思うんだがね……」
言葉に呼応するように、ドアの外では爆音が響き渡っていた。
次の瞬間。ドアが吹き飛び、巨大な爆音が部屋の中にまで響き渡った。吹き飛んだドアは宙を舞い、部屋の中央部で鈍い音を立て、折れ曲がった。
「おいジジイ。人が寝てるのをジャマしやがって」
ドアを開け……ではなく、ドアを爆破して入ってきたのは一人の少年。
燃え盛るような紅蓮の髪がゆれている。まさにキリッ、という擬音が似合いそうな鋭い目元に赤い瞳。バランスの取れたパーツ配置に細い鼻筋を持つ顔立ち。適度に筋肉のついたであろう体格は、たくましさと包容力を思わず感じさせずにはいられない。そんな、流行りで言えば特上でアルデンテの容姿の持ち主である美少年だった。
ちなみに『特上でアルデンテの容姿』とは、異性から見れば老若嗜好関わらずどんな人でも確実に一目ぼれをするであろう容姿を意味する造語である。
ちなみにそんなアルデンテスタイルを持ち合わせた少年の足元には、先程爆破したドア、そして1つの掛札が踏みつけられている。
『ギルドマスター室。入るときはノックしてねハァト』
妙に愛らしい語尾のハートマークは別にして、再び少年へと視線を移してみれば、彼の右手には、メラメラと燃え盛る炎の球が形成されていた。だが、彼自身は熱くないのか、平然とした表情でキリトの背後にいる男性を睨みつけているようだった。
ちなみに殺気はキリトにも浴びせられていて、蛇ににらまれたかえるのような状態だった。
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