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「それで、用件は何だ? くだらない用件だったら容赦しないぞ」
「い、いや、用件は、シンとキリトで、フィラール学園に入学して欲しいっ……」
「エクスプロージョン」
「ウギャァァァァ!!」
次の瞬間、シンと呼ばれた紅蓮髪の少年が、右手に携えていた火球を男性へと放った。放物線を描き着弾したそれは、男性を中に閉じ込め燃え広がり、爆散した。
爆発が収まると、先ほどまで私服に身を包んでいた男性の皮膚は焼け爛れていて、服や髪に至っては、黒く焼け焦げていた。
一方シンと呼ばれた赤髪の少年は、いかにも面倒だと言わんばかりの表情を浮かべ、自らが魔法を放った相手をジト目で見つめている。
「で、何で俺が学園なんかに行かなくちゃならねぇんだよ」
シンは再び右手に火球を携えた。それを見た黒焦げの男性は、もつれる足で机を巡回し、すすこけた頭を地面に打ちつけながら早口で述べる。
「そそそそれはっ!! 16歳になったんだから、この国では学園に行くのは必然であるからして……」
男性の声色は震えており、同時にかなり早口だった。
ちなみに学園とは、十六歳から三年間、この世界では必ず入学しなければならない決まりがある。
例え如何に実力があろうと、例えどんなに偉かろうと、学園には必ず通わなければならない決まりになっている。
理由は学園に通い戦闘の適性を見極め、優秀な人材をギルドなどの対魔物組織に入団させ、人々を少しでも多く魔物の脅威から遠ざけようという国の意向によるものだ。
だが、多くの人はただ義務だからと言われるがままに通っている人が大半だ。意向まで知る必要性がまずないためだ。
「国からだと!?」
「はははいっ!!」
「ちっ。ならしょうがねぇな。おいジジイ。書類でもあるんだろ。さっさと出せよ」
「は、はいっ!! ただいま!!」
男性は、急いで机の中からごそごそと一枚の書類を引っ張り出し、シンへと手渡した。
「それと、キリトも一緒に学園に入学してもらうから……」
「そうか。……って入学は明日だと!? ふざけんなてめぇぇ!! バースト!!」
「あ、ごめんなさ……ギャアァァァァァ!!」
シンの右手から放たれた小さな光球が再び男性を巻き込み、轟音と熱気をまき散らしていた。
だが彼はその光景を一瞥することも無く、手元にある書類を眺めながら、燃え盛る男性をそのままに部屋を出て行った。
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