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「キリトには、今話をしておくべきなのかもしれないな」
顔を上げたグラハムの表情に、キリトは思わずたじろぐ。
肘を机に置き、組んだ手と顔を合わせるグラハム。このようなときは大概知らないほうがよかった話が多かったりするのを経験から学んでいるキリトは、思わず顔をしかめていた。
「というよりもキリト、なんとなく感づいてるから聞いてるんだろ?」
「うん。そしてその反応を見たら、なんとなく予想通りなのかなって思ったよ」
「まったく。人の反応を見て結論を出そうとするとは、その性格は少しどうにかしたほうがいいぞ」
「そうだね。ちょっと気を付けるよ」
グラハムは一つ息を吐くと、言葉を紡ぐ。
「そうだ。大方キリトの予想している通りだろう。表向きは自己防衛や選出といった、人々を守るための力を高める場所として機能している」
言葉を切り、一度息を大きく吐く。先ほどよりも話しにくそうな声色で、続ける。
「そしてもう一つ、能力が極めて高く、かつ中央部の意向に反する思想を持つ人物を危険因子とみなし、”情報収集”から”思想矯正”ないし”抹殺”を遂行する機関としての機能がある」
「……ある程度は予想してたことだけど、そうして言葉で聞くと、やっぱりきついものがあるね」
「それを覚悟で聞いたんだろ? まぁそういうわけだ。だが一つ言っておくとすれば、中央部が定める能力が極めて高い人物は、おそらく今の世界だとシンぐらいしかいないだろう」
「え? グラハムさんもそこに選ばれなかったの?」
「俺程度じゃそこまでにはならないさ。まぁ、同じ教育を受ける以上、思想矯正というところに関しては全員が受けることになるんだがな」
「そっか、そうだよね」
「だから正直なところ、あまりその機能に関しては深く考えないほうがいい。第一、今まで抹殺の機能が遂行されたという話は聞いたことがない。あくまでも中央部の意向としてそういう話になっているだけだから、いざその条件が当てはまった時、本当に遂行するかどうかも眉唾物だ。だからとりあえず、羽を伸ばして楽しんできてくれという事で、俺はお前を送り出したいと思う」
「……シンは?」
答えに詰まったグラハム。一つ咳払いをし、キリトに背を向け、天を仰いで一言。
「……正直、厄払いの部分もあったりする」
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