プロローグ

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「どうしたの? シン」  振り向きざまキリトは言葉を返す。無意識に後ろで組んでいる指先はかすかに震えている。 「ちょっと付き合え」  問答無用で肩を掴まれ、キリトは足をもつれさせつつも、転ばないよう必死に体勢を整える。  そんな彼から視線を外し、シンは何かをブツブツと唱え始めている。 「な、ちょっと待って、僕は……」 「あん? 何か文句言ってんじゃねぇよ。バレットボム!!」 「うわ!! ウアアァァァ!!」  抗議しようと思ったキリトだったが、いきなり肩を突き飛ばされる。体勢を整える暇もなかったキリトはお尻から地面に着地すると、何時の間にやら用意されていた巨大な火の玉が、シンの右手に見える。それらが容赦なく、顔を上げたキリトに向かっていた。  キリトにそれを避けることなどできなかった。いくつもの火の玉が体に直撃。瞬間的に服を燃やし、接触とともに体の表面で爆発する。  しばらくの後閃光が収まり、キリトが姿を現す。だが纏っていた服は半分以上が焼け焦げており、キリトの顔も何か所も焼けただれた跡が見えた。 「う、うぅ……」 「やべぇ、ちょっとやりすぎちまったか。転移」  次の瞬間、シンとキリトは光に包まれ、あっという間にその場から消え去った。キリトがいた場所のカーペットだけは灰のようになっており、未だに白い煙を吐き出し続けていたのだった。
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