第2章

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「うん……。俺も好きだよ…。忘れない…。絶対に迎えに行く…。尚志も忘れんなよ」  蘭丸は笑っていた。  その笑顔の中にはもう、さっきまであった不安はなさそうだった。 「メリークリスマス…。じゃぁね」  そう言って蘭丸は電話を切った。  携帯を少し眺め、俺達を見た。 「俺、咲君みたいになれるように仕事頑張る…。それで、咲君と先生みたいになる。絶対になる」  その目は小学生には見えないくらい立派な男の目だった。  好きな人に会う為に頑張る。  それは何にも変えられない力になる。 「蘭丸。頑張れ」  俺がそう言うと、蘭丸は笑った。 「先生、ありがとう…」  蘭丸の口からそんな言葉が出るなんて思っていなかった俺は不意をつかれて泣きそうになった。 「どういたしまして」  俺はそう言うのが精一杯だった。 「よし、じゃぁクリスマス会やり直すか」  朔一がそう言って、また蘭丸の皿に料理を置いた。  蘭丸はさっきとは別人みたいに会話を自分からするようになった。  その姿は年相応の小学生。  でも、それで良いと俺は思った。  小学生が小学生らしくなくて何がいけない。 「ご飯食べたらケーキもあるからな」 「ケーキ!」  蘭丸は目を輝かせた。  俺はそれを見て、ケーキをホールを買ってよかったと思った。  こんなクリスマスもあって良いと思う。  それは朔一も同じようだった。 「サク」  俺は蘭丸が料理に集中しているのを確認してから朔一に言った。 「ん?」 「大好き…」  朔一の顔が真っ赤に染まり、俺は幸せを噛み締めた。 ~END~
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