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満月の夜、街灯が照らす薄暗い闇の中を俺は駆けていた。
何故こんな事になっているのかは分からない。ただ分かっている事は・・・
俺は走りながら背後を見やると闇の中からゆらりと現れた人影が一つ。
闇の中から現れたそれは全身が影のように真っ黒なコートを着ていて顔はフードを深く被っていて分からないが、その見るからに怪しい姿の人物は片手に持っている長い棒の様な物を担ぎながら俺の後ろを追いかけて来ていた。
あいつに捕まったらヤバいって事だけだ。
「くそ、まだ追って来るのかよ」
かなり複雑な構造の道を走っているっていうのに一定の距離を保ちながら付いて来てやがる。何なんだよあいつは!
俺は背後の化け物を一睨みすると右側、正確には右斜め後ろを見やる。
そこには俺に手を引かれながら駆けている着物姿の少女がいた。
「お願いします、私の事なんて見捨てて逃げて下さい!そうすればきっとあなただけは助かります!」
少女は俺の視線に気づいたのかそんな事を言ってくる。
さっきからずっとこれだ。様子を見る度に自分を見捨てろだの俺だけは助かるだのと言ってきやがる。
「そんな事出来る訳ないだろ!いいから早く走れ、きっともう直ぐ人通りが多い場所に出る。さすがのあいつもそこまでは追ってこないだろ!」
俺は正面に向き直ると少しでも距離を稼ぐために踏み込んだ右足に力を込めて加速する。
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